
はじめに
僕とJ.M. WESTONの出会いは特別お洒落な出会いではなく、ごく普通にショッピングを楽しんでいた日の事です。
J.M. WESTONとの出会いについてのブログはネット上にいっぱいあるが、検索上位にあがってくるそのどれもが「パリで出会った」や「パリで買った」など洒落たエピソードのものが大半だが、私の出会ったきっかけはいたって平凡だった。
かくいう私も学生の頃パリに行った事はあるがその時はJ.M. WESTONなんて知らないくらいにわかだった。
その当時は革靴をカジュアルに履くという思考すらなく、もっぱらスニーカーばかり履いていた。
実際にその当時、革靴には目もくれず、パリ中心部の1区でKRISVANASSCHE(クリスヴァンアッシュ)の今は無き旗艦店第一号でスニーカーを買った記憶がある。
今回はそんな、私が革靴にどっぷりハマるきっかけになったJ.M. WESTONに出会った話である。
出会い
あるセレクトショップでJ.M. WESTONのゴルフが経年変化のサンプルとして置かれているのを見かけたのが始まりだった。
その、セレクトショップはJ.M. WESTONを販売している訳ではなかったが、アパレル、靴と共に数々のシューケア用品が置かれており、革靴をケアし長く使うと味わい深くなるといういう事謳いたかったのだと思う。
その当時は、革靴という物に特別興味があるというわけでもなかった。もちろんJ.M. WESTONという靴のメーカーすら知らなかったくらいだ。
経年変化のサンプルとして10足ほど並べられた靴の中にはJohn Lobb(ジョンロブ)、Alden(オールデン)、Trickerʼs(トリッカーズ)、Paraboot(パラブーツ)、QUILP(クイルプ)などの靴が鎮座する中でも特に私の目を惹いたのはJ.M. WESTONのゴルフだった。
その、置かれていたサンプルがボロボロで傷まみれにも関わらず、「可愛らしかった。」
レッドウィングや、ウェスコなどのワークブーツの類いはボロボロで傷まみれな姿が男らしくてカッコいいと感じるにも関わらず、この時「可愛らしい」と感じ「カッコいい」と感じなかったのを覚えている。

ある人はそれを「粋だ」なんて表現するが、J.M. WESTONのゴルフのサンプルもボロボロで傷まみれだったが私の中ではとにかく可愛らしく、愛らしく目に映ったのだった。
そのフォルムは丸くて、ポッてっとしているにも関わらず、コバの張り出しやどんな天候にも対応するリッジウェイソール、個々のパーツに焦点を合わすとワークブーツと言わんばかりのディテールだ。
ポテっとした可愛らしい一面とゴツゴツしたワークブーツのような相反するテイストが一つの靴の中に共存している。
ちぐはぐな感じを出さず、一つのデザインとして成り立っているではないか。

「この靴はどこのブランドですか?」
そう一言聞けばいいものの、「そんなのも知らないの?」と思われるるのが嫌でグッとこらえて帰宅した。
今になって思うが、知ったかする客の方が相手をするのが難しいし、その時素直に聞けばよかったなと思う。
そんなモンモンとしたまま帰宅しさっそく調べに調べ、そこで初めてJ.M. WESTONのゴルフだということを知ることになる。
この時の私は革靴という物の相場がわからなかったので値段を見た時驚愕した。
「た、高い。」
5~7万くらいだと思っていたが、想定していた値段の倍くらいしているではないか。
だが、逆にそれが私の興味を惹いた。
この 革靴をこの値段にさせる要因はなんだ?
革質、製法、ブランドの歴史などの基礎的な知識をネットで調べただけの上澄みだけだったが、それでもJ.M. WESTONという靴がなぜ高いのかという理由が何となくわかった気がした。
そして、J.M. WESTONがフランスの靴だという事もこの時同時に知った。
上記で感じた、二つの相反するテイストが一つになり、見事なバランスで共存しているという不思議な感じを覚えたのも、フランス製という事を知ったときに根拠もないのに妙にしっくり来たのを覚えている。
「なるほど、このシンプルながらも高いデザイン性はフランス製ならではなのか」
Aldenに浮気
その後、革靴の奥の深さからJ.M. WESTONだけに留まらずいろんなブランドの靴を調べた。
John Lobb、Edward Green、Crockett&Jones、Church’s
有名なところは一通り調べ、今の自分の気分に合うのはどの靴なのだろうと…
中古で買うのも視野に入れ、当時の自分の財布事情と相談し、買うに至ったのがAldenのカーフレザーのVチップ

国内定価で10万近くするが、Alden=コードバンのイメージが染みついてしまっているからなのか、単純にAldenのカーフレザーは人気が無いからなのかは分からないが、当時は綺麗な物でも中古だと2~3万くらいで買えた。
この時、経験値よりも知識ばかり先行してしまっていて自分の足に合うかどうかなんてものは完全に頭になかった。
「Alden買うなら絶対モディファイドラストだな!!」
と意気込んでいた、
この時の私は
「早く”高級紳士靴”なる物を履いて、革靴の経験値を増やしたい!」
その一心だった。
そのため、軽くググっただけの付け焼刃の知識と何故かはわからないが自分は「このサイズだ!」という謎の自信でネットで購入した。
結果、デカかった。
この後、AldenのVチップは3~4年くらい所持していたが、結局足に合わなかったからか履く頻度が減りJ.M. WESTON購入後しばらくして手放すことになった。
今思うと、この時サイズ選びでミスをしてしまったのはいい経験になったなと思う。
おかげで、
- 初めて買うブランドの靴は絶対店頭まで足を運んで試着をすること
- んなに欲しくて、お気に入りの靴を買っても足に合わない物だと絶対に履かなくなるということ
文字に起こすと普通の事、当たり前なことだけど、欲にくらんでしまうと正しい判断が出来なくなってしまう。
結果論だが、大本命のJ.M. WESTONを買う前に失敗できてよかったなと今では思う。
念願のgolf購入
J.M. WESTONのゴルフを見かけてから頭の片隅にずっといた。
欲しいものがあって、それを紛らわす為に似たようなものや、近いものを買っても余計に欲しくなるだけということに気付かされた。
J.M. WESTON心斎橋店に行ってはゴルフを試着した。
「すいません。購入考えてて試着だけいいですか?」
”万力締め”と形容されるフィッティングだが、想像していたほどキツくはない。
確かにタイトめのフィッティングではあるが…
この頃の僕はファッションに完全に溺れており、着倒れ寸前の自分は月々のクレジットカードの支払いを考えると、
「ダメだ、買えない。」
完全に自分の中では”買う”ということは決まっており、頭の中では
「この靴を履くときは、あのパンツ履いて…」
「あんなジャケット着て…」
「あんな髪型にしよう。」
試着して、鏡の前に立つと
そんな妄想を膨らませるのだが、
「すいません、ちょっと考えます。」
その一言発した瞬間、今まで頭の中にあったものが全てなくなるのである。
「これは、もう体に悪い。マジでそろそろ買わないともたない。」
しかし、そのタイミングは突然訪れた。
いつものように、ヤフオクと楽天をパトロールしていた時である。
「え、マイサイズで、ほぼ新品の状態のものが出品されている。」
しかも、ウィズまで探していたサイズのものではないか。
その時のカートに入れるまでの思考時間は3秒もなかったと思う。
しかも、ロシアンカーフと明記されてはいなかったものの、靴の内部の印字を見ると明らかにロシアンカーフではないか。
J.M. WESTO
今後もJ.M. WESTONは購入していくだろう。
もちろんEdward Green やAldenなどの他の既成靴も購入していくだろう。
その時聞かれる。
「一番好きな靴のブランドは?」
もちろんその時は、
「私の最も好きな靴はJ.M. WESTONだ。」
そう答えると思う。
学生の時に行った”パリ”
一生忘れない。
私の生きてきた人生の中で最も自分の価値観を変えた出来事だった。
この靴J.M. WESTONにはフランスが詰まっている。
この靴を履いて街を歩いている時、私はパリジャンになる。
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